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セイドレイ【完結】
第54章 最終章:夢のあと
帰りの電車に揺られながら、亜美は窓の外を眺める。
あの日ーー。
廃倉庫で、雅彦は息を引き取った。
その後を追おうとした亜美は、寸での所で駆けつけた警察官に保護され、病院に搬送された。
後から聞いた話によれば、あの場所に亜美と雅彦が居ることを通報したのは、『シンちゃん』だったとのこと。これには亜美も驚いた。
酒井は、あの場に居た男達に『口止め料』として金銭を支払い、雅彦の死をどうにか隠蔽する為の策を練っていたそうだ。
しかし、そんな酒井が奔走している間に、賄賂を唯一受け取らなかった『シンちゃん』が警察に通報。
その後酒井は逃走を図り、現在は行方不明となっている。
警察は引き続き捜査を続けているとのことだが…不思議と亜美には、特に感慨らしい感慨が無かった。
亜美はしばらく入院した後、自宅へと戻った。
幸い、腹の子には異常は無く、現在妊娠5ヶ月である。
雅彦の葬儀は、健一と慎二だけでしめやかに執り行われた。
亜美は立ち会うことができなかったが、雅彦の遺骨は今、あの和室に置かれている。
喪中ではあるが、49日も過ぎたことで、貴之の式には出席することにした。
当然、勤めていた事業所は退職した。
しかし社長である大川は、今もそこに居る。
恐らく『加害者の会』のメンバーらは、当初から何かあれば酒井を足切りするつもりで動いていたのかもしれない。
亜美も、必要以上に被害を訴えることはしなかった。
今回の件に関しては、自分にも非があると感じていたからだ。
そんな事の顛末を、健一と慎二は何も言わずに受け入れてくれ、今までと同じようにあの家で生活している。
全てはまた、平穏な日常に戻ったかのように思えた。
いや、そもそも平穏な日常など果たして存在していたのだろうか、と亜美は思う。
日常を揺るがせていたのは、他ならぬ自分自身だからだ。
過去の自分の幻影を、ずっと追い続けていただけなのかもしれない。
どのみち、雅彦の死にいずれは向き合わなければいけなかった。
死に目に会えたことをむしろ喜ぶべきだと、今なら思えないこともない。
腹の子が雅彦の血を引いている確証はないがーー、しかし、亜美には何故か自信があった。
(この子は絶対…お父様と私の子…)
あの日ーー。
廃倉庫で、雅彦は息を引き取った。
その後を追おうとした亜美は、寸での所で駆けつけた警察官に保護され、病院に搬送された。
後から聞いた話によれば、あの場所に亜美と雅彦が居ることを通報したのは、『シンちゃん』だったとのこと。これには亜美も驚いた。
酒井は、あの場に居た男達に『口止め料』として金銭を支払い、雅彦の死をどうにか隠蔽する為の策を練っていたそうだ。
しかし、そんな酒井が奔走している間に、賄賂を唯一受け取らなかった『シンちゃん』が警察に通報。
その後酒井は逃走を図り、現在は行方不明となっている。
警察は引き続き捜査を続けているとのことだが…不思議と亜美には、特に感慨らしい感慨が無かった。
亜美はしばらく入院した後、自宅へと戻った。
幸い、腹の子には異常は無く、現在妊娠5ヶ月である。
雅彦の葬儀は、健一と慎二だけでしめやかに執り行われた。
亜美は立ち会うことができなかったが、雅彦の遺骨は今、あの和室に置かれている。
喪中ではあるが、49日も過ぎたことで、貴之の式には出席することにした。
当然、勤めていた事業所は退職した。
しかし社長である大川は、今もそこに居る。
恐らく『加害者の会』のメンバーらは、当初から何かあれば酒井を足切りするつもりで動いていたのかもしれない。
亜美も、必要以上に被害を訴えることはしなかった。
今回の件に関しては、自分にも非があると感じていたからだ。
そんな事の顛末を、健一と慎二は何も言わずに受け入れてくれ、今までと同じようにあの家で生活している。
全てはまた、平穏な日常に戻ったかのように思えた。
いや、そもそも平穏な日常など果たして存在していたのだろうか、と亜美は思う。
日常を揺るがせていたのは、他ならぬ自分自身だからだ。
過去の自分の幻影を、ずっと追い続けていただけなのかもしれない。
どのみち、雅彦の死にいずれは向き合わなければいけなかった。
死に目に会えたことをむしろ喜ぶべきだと、今なら思えないこともない。
腹の子が雅彦の血を引いている確証はないがーー、しかし、亜美には何故か自信があった。
(この子は絶対…お父様と私の子…)