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セイドレイ【完結】
第54章 最終章:夢のあと
男が辿り着いたのは、市街地から少し離れた緑地公園。
日中は、子供連れの利用者がピクニックやバーベキューに興じるその場所は、彼にとっては最も無縁な場所のひとつだ。

男は路地に車を停め、エンジンを切ろうとしたその時ーー。

『…ではここでお悩み相談のコーナー。えー、〇〇区のラジオネーム…白タピオカさん?20代の女性ですね。はい。楓さんこんばんは。最近、職場の上司(40代)から熱烈なアプローチを受けているのですが、どう対処するべきか困っています。はっきり断ると仕事に影響してしまいそうで怖いです。だからと言って適当に相手をするのもそろそろ限界。他の人に相談したら「あなたが若いから」と言われて、まるで私に非があるような物言いでした。楓さんならどうしますか?…P.S. 先日、楓さんの新刊買いました~……。はーい、ということで…え~、毎度あり!という感じなんですけども…そうねぇ、この手の相談、一向に無くならないよねぇ』

男は思わず、ラジオに耳を傾ける。
楓がリスナーの悩みに、的確な回答を示していく。

『……つーわけで、まぁ、まとめみたいになっちゃうんだけど…私達はさ、日々そんな『自衛論』に苦しめられてるわけ。これは男に限ったことじゃなくて、女にもいる。何故か、嫌なことをされた側が『お前にも落ち度がある』って責められるアレね。でもさ、被害を受けた側からすると、そんなこと百も承知なわけよ。多かれ少なかれ、まずは自分自身の行動も省みるわけじゃん?その上で、嫌だった、苦痛だったと表明してるのにも関わらず、そこに追い討ちをかけるみたいに『でもお前も悪い』みたいに言われるの、すごく辛いよね』

男は耳が痛かった。
と同時に、ふつふつと苛立ちが沸き起こるのを感じていた。

『…あー、でも私の知ってる女の子で1人…私にとっては大切な子なんだけど…そういうさ、人の愚かな部分を全部包み込んじゃう、不思議な子が居るの。私にとってその子の存在を認めることは、さっき言った『自衛論』を肯定することになっちゃうから実は都合が悪いんだけど…今も、その子の存在を認めたくない自分と戦ってる、って感じかな。すっごく良い子なんだけどね。本当に不思議…』


男はそこでエンジンを切った。

「(どいつもこいつも…何だよ!畜生っ…俺は、俺は悪くないっ!悪いのは女だっ…全部全部、悪いのはっ…!)」
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