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セイドレイ【完結】
第54章 最終章:夢のあと
男は怒りに任せた足取りで、深夜の緑地公園を横切って行く。

目指す場所は、この敷地内にある3つの公衆便所のうちのひとつ。
散歩コースの林道の行き止まりに設置された、男子便所だった。

「(これでデマだったら……お?)」

男がその場所に差し掛かると、トイレの中から1人の男が出てきて、深夜の林道へそそくさと消えて行く。

「(や、やっぱり…本当だったのか?!いや、たまたま小便してただけの可能性もある…)」

男はまだ半信半疑ながらも、胸の高鳴りを感じながら、その男子トイレへと一歩、足を踏み入れた。

「(…よし、誰もいねぇな…)」

トイレ内は小便器が4台。
そして、個室が3つあった。

「(…ま、マジかっ…!?)」

ネットで見た書き込みの通り、3つある個室のうち、一番奥とその隣のドアが閉められている。

つまりそれは、中に誰かが居ることを意味していた。

男は一旦深呼吸をしたのち、その一番奥の個室のドアの前に立つ。

再度、他に誰も居ないことを確認すると、これも書き込みにあった通り、そのドアを10回ノックする。

『コン、コン、コン、コン…………コン』

心の中で10回数えた。間違いないだろう。

しばしの沈黙。

「(…やっぱり、デマだったんじゃ…?)」

そう思った途端、ノックした方では無い隣の個室の中から、巨漢の男が姿を表した。

「…わっ!…あ、どうも…あんたがもしかして…"ご主人様"?」

男がそう尋ねると、その巨漢の男は無言で頷き、こう言った。

「…今日はあんたが最後。まぁ、最大1時間くらいを目安にして。終わりの合図は、便器の水を流すこと」

巨漢の男は淡々と説明をする。

「…わ、分かった。てか…やっぱり本当だったんだな?」

「まぁね。その代わり、俺の『便器』を使用するには『その理由』が必要なんだけど……ま、あんたの場合は…特別に、その見た目でパスしてあげるよ」

「…そ、それどういう…俺がブサイクだからか?ま、いいか…」

「へっ…まぁ、理由なんてなんでもいいんだけどね。一応、そういう建前だから。排泄してスッキリしたら、明日以降『世の為人の為』なることを何か一つすること。それが『便器』からのお願いだから。…じゃあ、ごゆっくり愉しんで…」

巨漢の男はそう言うと再び個室に戻った。
すると今度は、一番奥の個室のドアが静かに開いた。

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