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セイドレイ【完結】
第54章 最終章:夢のあと
そんな2人の様子を、隣の個室の上からひっそりと見下ろす巨漢の男が居た。
慎二だった。
このトイレの個室は壁が天井まで達しておらず、便座の上に登りでもすれば、このようにいとも簡単に隣の個室を覗き見ることができる。
最も、体重100キロを優に超える慎二の巨体に便座が耐えられないことを危惧し、自ら脚立を持ち込み、そこからこうして隣の個室を覗いている。
というよりは、監視している、という感覚に近い。
そう、慎二はこうして、天井から亜美を見守っていたのだ。
土曜日の深夜。
この公衆便所には、ネットの書き込みを見た男達がやって来る。
今、隣の個室で亜美にズボンを脱がされた中年男も、その書き込みを見た内の1人だった。
緑地公園の男子便所、その一番奥の個室に『便器』が居るーー。
一部のマニアを中心にひっそりと拡散されているこの情報の発信源は、慎二だった。
慎二がSNSに『セイドレイ』というアカウントを作ったのは、今から2ヶ月程前だろうか。
あまり目立たない程度に投稿をしているつもりだが、着々とフォロワーが増え続けている。
慎二は、そのアカウントに興味を示した男と、ダイレクトメールでやり取りをする。
基準はいくつかあるのだが、一番はその『理由』を聞くこと。
日頃の鬱憤やストレスなど、理由はなんでも良い。
例えば、『女にモテない』、そんなものでもOKだ。
ただ、『吐き出したいもの』があるかどうかーー、それが基準だった。
やり取りをした男達の中から、それらの基準をクリアしたと認められた男にのみ、『亜美の出没情報』が伝えられる。
選ばれた男達は、その出没情報により指定された時間にこの公衆便所にやって来ると、一番奥の個室を『10回』ノックする決まりになっていた。
晴れてそこまで辿り着いた男達は、その個室の中に居る『便器』である亜美に、『全てを吐き出す』ことが許される。
もちろん、そこに金銭の授受は一切発生しない。
ただ一つ、亜美に『全てを吐き出した』その対価として、男達は翌日以降、『世の為人の為』になることを何か一つ行う、ということになっている。
それは例えば、『ゴミを拾って捨てた』とか『お年寄りに席を譲った』などでも良い。
それを後日、何か証拠として慎二にメールで報告することができれば、また次回、優先的に『吐き出す』ことが許される、という仕組みだった。
慎二だった。
このトイレの個室は壁が天井まで達しておらず、便座の上に登りでもすれば、このようにいとも簡単に隣の個室を覗き見ることができる。
最も、体重100キロを優に超える慎二の巨体に便座が耐えられないことを危惧し、自ら脚立を持ち込み、そこからこうして隣の個室を覗いている。
というよりは、監視している、という感覚に近い。
そう、慎二はこうして、天井から亜美を見守っていたのだ。
土曜日の深夜。
この公衆便所には、ネットの書き込みを見た男達がやって来る。
今、隣の個室で亜美にズボンを脱がされた中年男も、その書き込みを見た内の1人だった。
緑地公園の男子便所、その一番奥の個室に『便器』が居るーー。
一部のマニアを中心にひっそりと拡散されているこの情報の発信源は、慎二だった。
慎二がSNSに『セイドレイ』というアカウントを作ったのは、今から2ヶ月程前だろうか。
あまり目立たない程度に投稿をしているつもりだが、着々とフォロワーが増え続けている。
慎二は、そのアカウントに興味を示した男と、ダイレクトメールでやり取りをする。
基準はいくつかあるのだが、一番はその『理由』を聞くこと。
日頃の鬱憤やストレスなど、理由はなんでも良い。
例えば、『女にモテない』、そんなものでもOKだ。
ただ、『吐き出したいもの』があるかどうかーー、それが基準だった。
やり取りをした男達の中から、それらの基準をクリアしたと認められた男にのみ、『亜美の出没情報』が伝えられる。
選ばれた男達は、その出没情報により指定された時間にこの公衆便所にやって来ると、一番奥の個室を『10回』ノックする決まりになっていた。
晴れてそこまで辿り着いた男達は、その個室の中に居る『便器』である亜美に、『全てを吐き出す』ことが許される。
もちろん、そこに金銭の授受は一切発生しない。
ただ一つ、亜美に『全てを吐き出した』その対価として、男達は翌日以降、『世の為人の為』になることを何か一つ行う、ということになっている。
それは例えば、『ゴミを拾って捨てた』とか『お年寄りに席を譲った』などでも良い。
それを後日、何か証拠として慎二にメールで報告することができれば、また次回、優先的に『吐き出す』ことが許される、という仕組みだった。