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セイドレイ【完結】
第54章 最終章:夢のあと
純白の花嫁衣装。
およそ2ヶ月前、貴之の挙式に参列していた時は、それは自分には無縁のものだと思っていた亜美。
しかしいざこうして着ることになると、やはりこれは女にとって特別なものであるような気がしてくる。
ドレスのタイプは、妊婦でも着やすい胸下の切り替えからスカートが伸びるエンパイアラインを選んだ。
ディテールは派手さを抑えナチュラルな印象を与えるものだが、それが却って亜美の美しさを際立たせている。
ドレスの白さにも負けないその透明感に、プロのヘアメイクやスタジオスタッフもつい息を飲んでしまうほど。
普段はあまりメイクもせず、アクセサリーも身につけない亜美だったが、こうしてほんの少し装飾がされるだけでも、ぐっと艶やかさが増してしまう。
健一は、そんな亜美の全てがたまらなかった。
清純でイノセントな輝きを放つ中に散りばめられた『母性』の象徴が、男の遺伝子を有した健一を否応なしに焚き付ける。
緩くアップにまとめられた髪からこぼれるうなじ。透き通るような質感のデコルテに、うっすら浮かび上がる鎖骨の丘。そこを下ると、こんもりとした2つの山が深々と胸の谷間を刻む。それらを支配しているのは、月のようにまんまると膨らんだ妊娠7ヶ月の腹。
少女であり、淑女であり、そして母であるというその佇まいは、男が母親の子宮の揺りかごの中に置き忘れてきた記憶を一斉に呼び覚ます。
処女性と母性の同居。
男が女に求めるものが、全てそこに詰まっていた。
「(全部入り、って…このことじゃねぇか…!)」
また、2人の息子に注がれる無償の愛を帯びた眼差しも、健一にとってはたまらないものだった。
健一は多幸感に包まれていた。
これまで、男達によって様々な装いを強要されてきた亜美。
現役の女子高生だった頃の制服をはじめ、コスプレの類いはおおよそ網羅してきている。
しかし、この姿だけは、この花嫁姿だけは。
どんな地位や権力を持った男にも、まだ見られていない。
「本当に…本当に綺麗だよ…亜美」
「…もぅ、あんまり見ないでください。恥ずかしいから…」
「でも…良かった。親父が死んだ後で」
「え…?」
「きっと今頃、あの世で悔しがってるぜ?もしかしたら生き返って来るんじゃねぇか?」
「もう…健一さんたら」
亜美は、持参してきた雅彦の遺影を見つめる。
(お父様…私、綺麗……?)
およそ2ヶ月前、貴之の挙式に参列していた時は、それは自分には無縁のものだと思っていた亜美。
しかしいざこうして着ることになると、やはりこれは女にとって特別なものであるような気がしてくる。
ドレスのタイプは、妊婦でも着やすい胸下の切り替えからスカートが伸びるエンパイアラインを選んだ。
ディテールは派手さを抑えナチュラルな印象を与えるものだが、それが却って亜美の美しさを際立たせている。
ドレスの白さにも負けないその透明感に、プロのヘアメイクやスタジオスタッフもつい息を飲んでしまうほど。
普段はあまりメイクもせず、アクセサリーも身につけない亜美だったが、こうしてほんの少し装飾がされるだけでも、ぐっと艶やかさが増してしまう。
健一は、そんな亜美の全てがたまらなかった。
清純でイノセントな輝きを放つ中に散りばめられた『母性』の象徴が、男の遺伝子を有した健一を否応なしに焚き付ける。
緩くアップにまとめられた髪からこぼれるうなじ。透き通るような質感のデコルテに、うっすら浮かび上がる鎖骨の丘。そこを下ると、こんもりとした2つの山が深々と胸の谷間を刻む。それらを支配しているのは、月のようにまんまると膨らんだ妊娠7ヶ月の腹。
少女であり、淑女であり、そして母であるというその佇まいは、男が母親の子宮の揺りかごの中に置き忘れてきた記憶を一斉に呼び覚ます。
処女性と母性の同居。
男が女に求めるものが、全てそこに詰まっていた。
「(全部入り、って…このことじゃねぇか…!)」
また、2人の息子に注がれる無償の愛を帯びた眼差しも、健一にとってはたまらないものだった。
健一は多幸感に包まれていた。
これまで、男達によって様々な装いを強要されてきた亜美。
現役の女子高生だった頃の制服をはじめ、コスプレの類いはおおよそ網羅してきている。
しかし、この姿だけは、この花嫁姿だけは。
どんな地位や権力を持った男にも、まだ見られていない。
「本当に…本当に綺麗だよ…亜美」
「…もぅ、あんまり見ないでください。恥ずかしいから…」
「でも…良かった。親父が死んだ後で」
「え…?」
「きっと今頃、あの世で悔しがってるぜ?もしかしたら生き返って来るんじゃねぇか?」
「もう…健一さんたら」
亜美は、持参してきた雅彦の遺影を見つめる。
(お父様…私、綺麗……?)