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セイドレイ【完結】
第54章 最終章:夢のあと
「…ただいまー。ふぅ、ちょっと遅くなっちゃった」

帰宅した慎二がそう言いながら、何やら両手に袋をぶら下げている。

「…おかえりなさい。慎二さんその袋…何買ってきたの…?」

亜美は、その袋を不思議そうに見つめていた。

「あ、うん…ちょっとね、今日はお祝いに、と思って」

「お祝い…?」

「そそ。さて…と。…どうぞー!入っていいよー!」

慎二は唐突に、リビングのドアに向かってそう声を掛ける。

(えっ…?誰か…居るのっ…?)

亜美はドアの方を振り向く。

すると、そこに立っていたのはーー。



「…よ、よぉ、高崎。あ、今は市川だったな。こりゃ失礼」

「あああ亜美ちゃんっ!!おっおっおじゃましますっ…!」


本山と田中。
あの事件に関与した加害者の2人がそこに居た。

「…せっ先生っ!?それから田中さんもっ…!?どうしてっ…!??」

亜美は2人の姿に、身を乗り出して驚く。

「…驚かしちまって申し訳ない。詳しい話は後だ。とにかくまずは…」

本山がそう言うと、2人はリビングの床に土下座の姿勢を取る。

「…高崎っ!本当にっ…本当に申し訳なかったっ!!どれだけ謝っても許されないのは分かっているっ!だがせめてっ…直接頭を下げさせてくれっ……」

「先…生……」

「ぼぼぼ僕もっ…!!本当にっ…ごっごごごめんなさいぃっ!!本当にっ…本当にぃっっ…」

「田中…さん……」

2人はずっと頭を下げたまま、身を震わせ泣いている。
亜美はそんな姿を、しばらく無言で見つめていた。

その様子を見守る健一と慎二は互いに目配せをしながら、同じことを考えていた。

やはり、せめて " 事前に確認 " すべきではなかったのか、とーー。



「……お二人とも、顔を上げてください」

亜美のその声に、本山と田中はピクリと肩をすくめる。

リビング内に緊張が走る。

そこに居る男全員が、亜美が次に喋る言葉を待ち構えている。

「ふぅ…」

亜美は短いため息をつくと、まだ頭を下げたままの2人に近づく。

「…子供が寝ていますから、あまり大きい声は出さないで」

そして続ける。

「…ところで今日は、お祝いなんですよね?じゃあ土下座はおかしくないですか…?」

『えっ…?』

2人が同時に頭を上げ、亜美を見上げる。

「…先生、田中さん。お久しぶりです。お元気でしたか?」
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