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セイドレイ【完結】
第54章 最終章:夢のあと
更に田中がそこへ付け加える。

「…あっ、亜美ちゃんの近くに居るからこその師匠の悩みと…もう亜美ちゃんに会えないからこその僕らの悩み…でも、どちらもちゃんと償いたい、って気持ちは同じなんじゃないかって…それでっ…」

「…私に…会いに来てくれたんですね?」

「はっ、はいっ…もう僕らの顔も見たくないのは分かってるんだけど…。ごめんなさい。ただ、今亜美ちゃんが師匠や健一さんと暮らしてる、って聞いたら…僕らにもまだ何かできることがあるんじゃないかって…いてもたってもいられなくなって…。師匠が現状とどう向き合うのか悩んでるなら、僕らも一緒に考えるべきなんじゃないかと…」

特に本山と田中は、加害者でありつつ自分達も新堂に脅されていたという被害者の側面もある。
亜美の傍らでその全てを見ていながら、自己保身のために何もできなかったことを今も悔いているのだろう。

本山は言う。

「…いくら俺達も脅されていたとはいえ、あんなことになるまで何もできなかった…いや、何もしようとしなかった。それなのに裁判で高崎は、俺と田中君の減刑を訴え続けてくれた。一番辛いのは高崎なのに、こんな俺達のことを守ろうとしてくれた…俺達は高崎を守るどころか傷つけたっていうのに。あの時、あらためて自分がやらかしちまった罪の大きさを思い知ったんだ。あとの祭りだがな。罰は受けたが、結局俺達は最後まで高崎に救われちまった…。それが今もずっと尾を引いていてな…」

これについては、健一も慎二も、そして今は亡き雅彦も、同じことを思っているだろう。
いっそのこと厳罰を望まれた方がどれだけ楽だったか。
亜美の慈悲に絆されてしまった男達は、赦されてはじめてその罪を知ったのだ。

「…分かりました」

亜美は小さくそう呟く。
そして、俯いたままの2人にこう告げた。

「じゃあ…忘れないでください。その気持ち…今のその気持ちを、ずっと覚えていてください。それがあなた達にできる私への償いなんだと思います」

「…それが…償い?」

「…ええ。してしまったことは消えないし、時間を巻き戻すこともできないですから。…今の私がそうであるように。私も、過去の自分を決して忘れていない。でも、否定からは何も生まれないんです。自分が生かされている意味を考え続けること、それが今の私からの、過去の私への償いだと思っています」
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