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セイドレイ【完結】
第54章 最終章:夢のあと
亜美のその言葉に、本山や田中だけでなく、健一や慎二も胸を痛めずにはいられなかった。
自らに対する償いーー、そう。
被害者であるはずの亜美が、事件の傷を背負ったまま過去の自分自身を責め続けていたという事実。
贖罪の念に駆られていたのは、なにも自分達だけではなかったのだということを、男達はこの時になって気付かされたのだ。
「…先生は先程、ご自身のことを『ないものねだり』とおっしゃいましたけど…それは私も同じです。事件が終わって平穏な暮らしに身を寄せていても、私の中にずっと過去の私が居ました。でも…」
すると亜美はスマホを取り出し、とある画像を2人に見せる。
「こ、これはっ…水野の野郎か??」
「ほっほっ本当だっ!水野君っ…結婚したの??」
その画像は、貴之の披露宴で撮影した一枚。
「…はい。2ヶ月程前に、式に出席してきました。幸せそうですよね。…私は、彼のことを傷つけた。いくら事情があったとはいえ、それは事実です。…しかも、あんな酷いやり方で」
「高崎っ…でもあれはお前が悪いわけじゃっ…あの時はどうしようもなかったじゃないかっ…!」
あの時、その場に居合わせ一部始終を見ていた本山は、それが新堂や酒井の策略によるものだったことを知っている。
しかしーー。
「…果たして本当にそうでしょうか。私がもう少し早く行動できていれば…もう少し勇気があったなら。少なくとも、あんな最悪な形で彼を傷つけずに済んだ。結局私も、彼を守りたいと言いながら、どこかで自分を守っていたんですよね。何もかも中途半端な私の弱さが招いたこと。…そしてそもそも、彼を巻き込んでしまった責任は私にあります。それなのに彼は…水野くんは、こんな私を許してくれた。あんなことがあったのにも関わらず…しかも、その後の私の生き方を知った上で、こうして結婚式にまで招待してくれた。私は…彼に許されたことで救われたんです」
「亜美ちゃん……」
「…だから、私も過去の自分を赦すことにしました。人は赦されることで救われるということを身をもって知ったんです。でも、そこに起きたことを忘れてはいけない。昨日の私が今日の私を生かし、そして今日の私が、明日の私を生かす。そのために今何ができるかということを考え続けることこそが、生きているということなんじゃないかと…今はそう…信じています」
自らに対する償いーー、そう。
被害者であるはずの亜美が、事件の傷を背負ったまま過去の自分自身を責め続けていたという事実。
贖罪の念に駆られていたのは、なにも自分達だけではなかったのだということを、男達はこの時になって気付かされたのだ。
「…先生は先程、ご自身のことを『ないものねだり』とおっしゃいましたけど…それは私も同じです。事件が終わって平穏な暮らしに身を寄せていても、私の中にずっと過去の私が居ました。でも…」
すると亜美はスマホを取り出し、とある画像を2人に見せる。
「こ、これはっ…水野の野郎か??」
「ほっほっ本当だっ!水野君っ…結婚したの??」
その画像は、貴之の披露宴で撮影した一枚。
「…はい。2ヶ月程前に、式に出席してきました。幸せそうですよね。…私は、彼のことを傷つけた。いくら事情があったとはいえ、それは事実です。…しかも、あんな酷いやり方で」
「高崎っ…でもあれはお前が悪いわけじゃっ…あの時はどうしようもなかったじゃないかっ…!」
あの時、その場に居合わせ一部始終を見ていた本山は、それが新堂や酒井の策略によるものだったことを知っている。
しかしーー。
「…果たして本当にそうでしょうか。私がもう少し早く行動できていれば…もう少し勇気があったなら。少なくとも、あんな最悪な形で彼を傷つけずに済んだ。結局私も、彼を守りたいと言いながら、どこかで自分を守っていたんですよね。何もかも中途半端な私の弱さが招いたこと。…そしてそもそも、彼を巻き込んでしまった責任は私にあります。それなのに彼は…水野くんは、こんな私を許してくれた。あんなことがあったのにも関わらず…しかも、その後の私の生き方を知った上で、こうして結婚式にまで招待してくれた。私は…彼に許されたことで救われたんです」
「亜美ちゃん……」
「…だから、私も過去の自分を赦すことにしました。人は赦されることで救われるということを身をもって知ったんです。でも、そこに起きたことを忘れてはいけない。昨日の私が今日の私を生かし、そして今日の私が、明日の私を生かす。そのために今何ができるかということを考え続けることこそが、生きているということなんじゃないかと…今はそう…信じています」