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女ざかりの恋の音色は
第3章 近づきたい
「ねえねえ、樫野さんてオラクルのプラチナの資格持ってるの?」

昼休み、屋上のベンチでお弁当を食べていると、社内一可愛いと言われている花森ゆかりに声をかけられた。

(そのゆるふわなまとめ髪、どうやるの??そういうふわふわ可愛い印象与えるメイクはどうやって出来るように??そのチェックのロングタイトスカート、私が履いたら完全おばさんになるよなぁ・・・・・・)

芙実は今日も白シャツに紺のスカートと平常運転だ。

「あ・・・・・はい。まあ・・・・・・・」
「すごいねえ。どんな風に勉強した?」

芙実は簡単にどんな本を使ったとか勉強の方法を説明した。
男子に限らず、おしゃれ女子と話をするのは緊張する。

「樫野さんて派遣さんなの、もったいないくらい技術あるよね。すごいなぁ」
「いえ、全然、全然です」
「うちで正社員で働いたら?絶対採用されるよ」
「いえいえ・・・・・。あの・・・・・この会社の人はおしゃれな人が多いですよね。私は、その、ジャンルが違うので・・・・・似合わないと思います」
「あはは!そんなの気にしないでいいよぉ」
「はは・・・・・・」

(うう・・・・・否定しないのね・・・・・・)

当然だが、そんなことないよぉという返事はなかった。

ゆかりは別のおしゃれ女子に呼ばれて行ってしまった。

日陰だからまだいいが、もう屋上でお昼を食べるのも暑くなってきた。
芙実は早く食べてしまおうとペースを上げた。

「へ~。プラチナ持ってんだ」

ギクっとして顔を上げると、理志がちゅーっとストローでコーヒーを飲んで立っていた。
今日は濃いグリーンのネクタイをしている。眼鏡も合わせて深緑の眼鏡をかけていた。
芙実を見下ろす目つきやカップを持つ手がいちいち色っぽい。

(この色気ってやつも、どうやってかもし出すのだろうか・・・・・・)

「・・・・・・誰でも取れます」
「いやいや、誰でもは無理っしょ」

理志は芙実のとなりに座るとお弁当の中を覗き込んだ。

「あー玉子焼き!美味しそう!」

芙実は咄嗟に蓋を閉めた。

「・・・・・・なんで閉めるの。普通、こういう時一つどうですかって言わない?」
「蒼井さん、お昼食べたんじゃ・・・・・・」
「食べたけど、樫野さんの玉子焼きはまだ食べてない」

どういう理屈だと、芙実はチラと横目で蒼井を見た。

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