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女ざかりの恋の音色は
第3章 近づきたい
やっぱり昨日のことがあったからか、蒼井は距離を縮めてきた気がする。今までこんなこと言ったことはなかった。

芙実は周りをきょろきょろと見渡して、そっとお弁当箱を差し出した。

「・・・・・・どうぞ。早く取ってください」
「なんで?見られたらヤバい?」
「ヤバいですよ!」
「あーん」

芙実が玉子焼きを食べさせろいうように理志は口を開いた。

「何してるんですか!自分で食べてください!」
「え、だって、箸ないし」
「ゆ、指でつまむとか・・・・・」
「あ、ほら誰か来るよ。早く早く」
「!」

芙実は慌てて箸で玉子焼きを掴んで理志の口に入れた。

急いで周りを見渡すが、もう二人以外屋上に人はいなかったし、出入り口から誰かが来る気配もなかった。

芙実は目を細めて理志を睨んだ。

「うん、美味しい!なんか、こういう家庭の味的なやつ、久しぶりかも」

理志が少年のような笑顔を見せたので、思わずドキリとする。

芙実は残りのお弁当を急いで食べた。

「そんなまた、逃げるように食べなくても・・・・・・・」

芙実はお弁当箱を片付け、箸をケースにしまって時計を見た。
あと10分で昼休みが終わる。今から歯磨きをして席に戻ればちょうど良い。

帰ろうとする芙実を理志は、まあまあと言って袖をひっぱり座らせた。

「ねえ、俺のこと嫌いなの?昨日といい、そんなあからさまに逃げるって、俺何かしたかなって思ってるんだけど」

芙実は、ずれた眼鏡を指で押し上げた。

「嫌いとかじゃ・・・・・・。き、、緊張するんです・・・・・。単純に。蒼井さんだけじゃなくて、ここの会社の人はだいたい・・・・・・緊張します」
「緊張?なんで?もうここに来て半年くらいたつよね?」
「時間の問題じゃないんです。その・・・・・オーラが」
「オーラ?」
「おしゃれオーラが」

何それーと理志はケラケラ笑ったが、本当にそうなのだから芙実としては笑えない。

「まあ、うちの会社若いやつ多いからね。社長がまた自由な感じの人だから。でもみんな普通だよ。別に緊張するような奴らじゃない」

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