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女ざかりの恋の音色は
第12章 【番外編】くもり空と秋晴れの空と
「私こそ・・・・。理志さんに恋してもらえるよう努力します。具体的にどうしたらいいのかわららないけど・・・・」
「’今以上になろう’と努力するんじゃなくて、’今以下にならないよう’努力する、くらいでいいんじゃない?」

理志は優しく微笑むと、チュと頬にキスした。

「テントあったらエッチなことできたのになあって思ってるでしょ?」
「・・・・・思ってません」
「でも、したいなと思わない?」
「・・・・・・」
「車でする?」
「・・・・イヤです」

芙実の拒絶に理志が目を細めて睨んだ。

「今努力するって言ったばっかなのに」

芙実は近くに人がいないことを確認して理志に身体を近づけた。

「・・・・もう声我慢するのイヤです。まわりを気にしないでいい所で・・・・・したいです・・・・・」

理志がクスっと笑った。

「帰り、寄り道していく?それとも家まで我慢する?」
「・・・・・寄り道で・・・・」

理志は満足そうに頷くと芙実の手首の内側に唇を押し当てて、ぺロ・・・・と舌先で舐めた。
手首からゾクゾクしたものが広がり、今すぐにでも理志に抱かれたくなる。

「もう帰ろうか?」
「・・・・・いいえ!今日はちゃんと演奏聴くって決めたんです!」
「素直じゃないなぁ。今すぐしたいって顔してるくせに」

理志がニヤニヤ笑う。
芙実は邪念を取り払うように理志から手を離して、ポケットに手を突っ込んだ。

(あ・・・・・)

芙実はポケットに入っていた、友里からもらったガーランドを取り出した。
芙実はそれを広げて空に掲げた。
青空に色鮮やかなガーランドが映える。風に吹かれてパタパタと三角の旗がはためいた。

「・・・・・・勝利の証か・・・」

手首にガーランドを巻いて手を繋いだ友里と浩之の姿を思い出す。
一度離れた二人の手は、今はきっと前よりもずっと強く繋がってるに違いない。
理志は何も言わずに芙実からガーランドを取り上げると、自分の手首にぐるぐる巻いて、もう片方の端を芙実の手首に巻いた。
芙実に優しく微笑みかけると、手をぎゅっと繋いでステージ前の人だかりの中へ入っていく。
美しく澄み渡る空が毎日続くわけじゃない。くもり空の時だってある。
それでもこの人となら乗り越えていけると思える。
芙実は理志の手をぎゅっと握り返した。
二人の未来を祝福するように、色とりどりの三角の旗が揺れた。


つづく
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