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女ざかりの恋の音色は
第12章 【番外編】くもり空と秋晴れの空と
「はい・・・・・。あの、さっき母に電話しました。紹介したい人がいるって」

理志は驚いた表情で芙実を見た。

「ほんと?」
「はい。理志さんのお仕事の都合でいいんですけど、再来週の日曜日はどうでしょうか」
「お。なんか一気に話が進んだね。了解。再来週の日曜ね」

理志が友達との約束事かのように軽く返事をするので、芙実は逆に不安になった。

「あの・・・・・緊張とかしないんですか?」
「俺、そういうの大丈夫なんだよね。だって、別にやましい事があるわけじゃないし。心の底から大事にしたいと思ってて、心の底から結婚したいと思ってるんだから。誠意を持ってご挨拶したら、わかってくれると思ってる」

こういうところが理志はすごいなと芙実は思う。自分の中ではっきりとした決意があって、それがブレることがないようだった。

「正直、芙実はまだ少し結婚に躊躇してると思ってたから、意外だったな」

理志が芙実の手をとってきゅ・・・・と握った。

「躊躇というか・・・・・・。もう少し理志さんと’恋人の時期’を堪能したいなーって思って・・・・・」
「あー。そういうこと?」

理志は納得したというように軽く頷いた。

「夫婦と恋人ってそんなに違う?」
「違うと思います」
「何が違う?」
「それは・・・・・。例えば女の人は、’嫁’とか’母親’になるわけで・・・・・・」
「まあ、それはそうだね。社会的な立場が変わるって意味ね。でも、そうじゃなくて、気持ち的にさ」
「気持ち?」

理志は少し屈んで芙実の目を覗き込んだ。

「俺はどんな芙実になっても、いつでも恋してると思う。昨日話してたみたいに、日常になっても根底では芙実に恋してるんじゃないかな」

芙実は目を見開いた。
本当にこの人はすごい。芙実が言って欲しいと思ってることを、ちゃんと言ってくれる。

「まー、女の人の方が気持ちの変化が大きいだろうからね。芙実にいつまでも恋してもらえるように、努力する。俺と結婚して良かったって思ってもらいたいから」

理志の瞳が、秋の空のように澄んで見える。
泣きそうになるほど美しかった。
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