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女ざかりの恋の音色は
第5章 早く二人で・・・・・
西野は手で口をおさえて笑い出すのをこらえて芙実にスマホを返した。

「・・・・・・ねえ、お願い、もう帰って。二人でいるって思ったら、仕事にならない。西野ぶっとばして、俺がそこに座りたくて発狂しそう」

理志の切なげな声が耳元で聞こえて、ドキドキしてしまう。

「わかりました・・・・・・」

理志はハァ~と大きなため息をついた。

「・・・・・早く二人で過ごしたいって思ってるの、俺だけじゃないよね?」
「・・・・・・・・」

芙実は西野の前で何と答えていいのかわからず沈黙した。
それを察して理志が声のトーンを落として、艶っぽく言った。

「『私も思ってる』の代わりに『お仕事頑張ってください』って言ってよ」

胸がきゅ・・・・・・として、次の瞬間会いたいなぁと思ってしまった。

「・・・・・・お仕事・・・・・頑張ってください」
「・・・・・・やっべ」
「?」
「自分で催促しといて、キちゃったなぁ。ニヤけて仕事にならないかも」

胸がきゅ~っとなる。芙実の顔もニヤけてしまいそうになって、ハッとして西野に悟られないために声のトーンを仕事用に変えた。

「はい。わかりました。お疲れ様でした」
「あれれ。突然切り替わった~。あはは。じゃあね。気をつけて帰って」
「はい。失礼します」

通話を切って西野を見ると、にこにこと笑っていた。

「何だって?」
「・・・・・・早く帰れって」
「何を心配してんだか。あ・・・・・・俺のとこにも来た。『早く帰らせろ』だって。父親かよ」

芙実は残りのアイスティーを一気に飲んだ。言われた通り早く帰ろうと思ったからだ。

「あいつ、見えないかもしれないけど、真面目で努力家なんだ。いい奴だから、安心していいよ」
「・・・・・・・はい」

西野と理志の友情が垣間見れて、温かい気持ちになる。

西野と別れて電車に乗っていると理志からメッセージが入った。

『帰ってる?』
『帰ってます』
『我慢してたのに、あいつのせいで、すっごい会いたくなっちゃった』

胸がじんわり温かくなる。同じ気持ちでいてくれて嬉しかった。

芙実は何て返したらいいのか迷って、文字を打っては消しを何度か繰り返した。

迷いに迷って、最後は思いきって送信ボタンを押した。

『お仕事頑張ってください』
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