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女ざかりの恋の音色は
第6章 忘れてたキスの甘さ
芙実は夏の日差しに目を細めた。カンカン帽をかぶりなおした。
梅雨が明けて本格的に暑くなってきた。

広大な敷地は綺麗な緑の芝生が敷き詰められていて、青空に映える。
大勢の人々が行きかい、誰もがわくわくした、溌剌とした表情をしているのを見ると、芙実の気分も高揚してくる。

そうでなくても、久しぶりに理志と二人で会えるのかと思うと嬉しくて顔が緩んでしまう。

芙実は週末実家に帰っていたので、実家から直接茨城へ向かって、理志とは現地集合になった。

芙実のスマホが鳴った。理志からだった。

「もしもし」
「着いたー。今どこ?」
「物販のとこにいます」
「わかった。そっち行く」

芙実はお目当ての商品を手にいれた後、理志を探した。

おーい、と手を振っている理志が見えて、芙実は手を軽く上げた。

エスニックな雰囲気の手触りの良さそうな薄いリネンの白いシャツを着て、カーキ地の複雑な柄模様のハーフパンツに黒のメッシュのスニーカーを履いている。
髪はうしろで束ねて、黒いキャップを被っていた。
普段スーツでは見えない男らしい鎖骨が見えてドキドキする。

なんだか照れくさくて目を見ることができなかった。

「晴れてよかったね」
「はい」
「・・・・・あれ?何か買ったの?」
「あ、ちょっと欲しいものがあって」
「もしかしてそのために早く来てたの?」
「はい」
「えー!?そういうの、一緒に買うんでしょうよ!も~」
「えっ・・・・・・・あっ・・・・・・・。蒼井さん、並ばせるの悪いかなと思って・・・・・・」
「一緒に並ぶのが楽しいんじゃん!」

芙実は気を使ったつもりだったのだが、理志は不満だったようだ。

「まあ、いっか。今日は一日一緒だし」

(一日・・・・・・一緒・・・・・・・・)

ニヤけそうになって右手でそっと口元を隠した。

「編み込み。かわいい。帽子も似合ってる」
「あ、暑いので・・・・・・」

帽子は今日のために購入した。勇気を出してショップの店員と相談して決めた帽子とヘアスタイルを褒めてもらって芙実は照れた。

理志の眼差しが、いつもよりずっと優しく思えて芙実は一瞬目を合わせたものの、やはりすぐに反らしてしまった。

「あ、そうだ。これ、どうぞ」

手にさげていた袋を見て思い出す。芙実は物販の袋からタオルを取り出して渡した。
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