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女ざかりの恋の音色は
第6章 忘れてたキスの甘さ
「何?」
「このフェスのタオルです。この前のチケットのお礼です」
「え、いいよ。チケット代、ちゃんともらったし」

理志は、芙実がチケット代を二倍払っていることを知らないと思っている。

「その・・・・・手数料みたいなものだと思ってください」
「何それ。いいってば。タオルは使いたいから助かる。いくらだった?」
「あの、じゃあ、あとでカキ氷おごってください」

芙実は理志が引き下がらないと思ったので、タオルより安いもので交換を提案した。

「オーケー。じゃあ、そうしよう」


音楽が聞こえてきた。

「始まったかな。行こうか」
「はい!」

理志は自然な仕草で芙実の手を取った。

「・・・・・・・・・!」

手をつないでステージの方に向かって歩く。

(こ・・・・・・恋人つなぎ・・・・・・・・!)

まるでいつもそうしてるみたいに指と指を絡ませて手を繋ぐ。
理志を見上げると、特に表情を変えた様子もなく前を見ている。

芙実はドキドキしてうつむいた。

ステージ近くは既に人がいっぱいだった。
ステージから離れた芝生の上に芙実が持ってきたシートを広げて座る。
二人でどのバンドの演奏を聴くかしばらく相談した。

人々の熱気に呑まれて、芙実も理志も音楽にのって体を揺らし、みんなと一緒に歌った。
午前中のうちに立て続けに演奏を聴いて、二人とも汗びっしょりになってシートまで戻る。

「キュッキュッキュ!出来た~~!感激!!」
「ちょっと、俺、もう後半ついていけなかった。体力的にキツいわ。年取ったな~」

芙実は、あはは!と笑った。汗でめがねがずれ落ちる。
眼鏡を外して汗を拭く。

「すごい汗」

理志が自分のタオルで芙実のおでこや首筋を拭いてくれる。

(わ・・・・・・わわわ・・・・・・・)

指がうなじをかすめる。手つきが優しく、不意に耳たぶをつままれてピクッと反応する。眼鏡を外していて良かった。まともに理志の顔を見ていられそうにない。

「眼鏡はずしてるとこ見れた。かわいい」
「・・・・・・・っ」

芙実は恥ずかしくなって自分のタオルに顔を埋めた。

(も~~この人はこういうことを簡単に・・・・・・・!)

「ね、腹へった。何か食べにいこ」
「・・・・・・はい」

理志が手を差し出す。芙実は少し躊躇いながらも手を取った。
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