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我が運命は君の手にあり
第7章 第七章
バスルームを出た冴子は、下着に手を伸ばすのをやめ、鏡に映る自分の身体と向き合った。特に不満を覚えたこともない見慣れた身体のはずが、いつになくため息が漏れた。

咲の肌は若々しく、どこに触れられてもすぐさま弾き返すハリがある。十年前とは違う自分の身体と向き合い、咲に嫉妬した。
この世に産まれ出た時から愛に囲まれ、何不自由なく育てられた娘。前向きに生きる事は当たり前で、人を疑う必要もない。彼女の明るさは天性のものだ。人生の始まりからすべてに恵まれている。おまけに今、若さを謳歌している……

冴子は今日、三十五になった。
今夜遼に「じつは誕生日なんです」と言って驚かせ、祝ってもらうシーンを思い描いてみた。もしも誘われたなら、恥じらいつつ頷き、一夜限りの夢を見る。そんな妄想を抱いていた。

未来をいきいきと語る彼が眩しかった。自分を見つめる瞳、その清廉さに胸が苦しくなり、会うたびに息苦しさが増した。
冴子は遼の視線や態度から、好意以上のものをもたれていることを察していた。そこに傾いている自分を必死に抑えていた。

なぜあの時、また誘うと言われた時、「はい」と答えてしまったのだろう。誰とも付き合わないと言っておきながらなぜ……

――難しくないです。好きになるのは難しくないですから

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