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我が運命は君の手にあり
第8章 第八章
明るく立ち去る遼を見送り、冴子は守沢が用意したコーヒーを皆に配った。

「秋津さん」

守沢に呼ばれ、空になった盆を手に給湯室の暖簾をくぐった。

「お家元となにかあった?」

肩を寄せてくる彼女に「いえ、特になにも」と答える。

「あなた鈍いのね」
「……」
「二代目はお盛んだったけど、態度や顔に出す人じゃなかったわ。今のお家元は真面目なのね、分かりやすいわ。あなたを見る目が違うし、これまでと態度も違う」

女の勘がばかに出来ない事を冴子は改めて知った。

「まさか」
「いくら女が寄ってきても靡(なび)かなかった男が初めて見せる顔よ」

口調は軽かったが笑ってはいなかった。

「だめよ」
「えっ」
「薄々気づいてるだろうけど、綾辺様のお嬢様の咲さん。お家元の事を好きなのよ、要するに片思い」

やはり、と冴子は思った。

「事と次第によっては、……このプロジェクト、白紙になるかもしれないわ」
「そんな……」
「綾辺様は咲さんを溺愛してらっしゃる、わかるでしょ?」
「はい」
「私の言いたいのはそれだけ。さ、向こうでコーヒー飲みましょ」

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