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我が運命は君の手にあり
第8章 第八章
「泣いたのか」

後部席に座った冴子に、バックミラーの視線が刺さる。

「いえ」
「……今日は暇でね。朝から嘘ばかりついて苦労したよ」

家に忘れ物をしたというのも嘘なのだろう、と冴子は思った。

「時江には嫌な役をやらせてしまった。……最近の遼の様子はいろいろと聞いている、いつだったか、あぁ、誕生日の夜だ。君にアパートに電話があっただろう?あれで私もピンときた」

終わりだ──

審判は下された。首に縄が掛けられたも同然だ。後は足場を蹴倒せば何もかも終わる。

「さて、工房へ行こう」
「え……」

車が動き出した。

「土を捏ねていると大抵の事は忘れられる。遼の事も」
「……」
「君は時江に不妊の事を打ち明けていたんだな、随分と懐いたものだ。驚いたよ」

姿見を前にして打ち明けた身の上を、時江は一度頷いただけで無言を通した。冴子に後悔はなく、不思議と安らぎを覚えた。

「私の側にいるんだ冴子。手放す気はないよ」

彼は、息子と通じているような女を嫌悪しないのだろうか。好色な彼にとっては一笑に付す事でしかないのか。

隠れ家で行われる事はわかっている。猿ぐつわをされ、縛られ、果てのない攻めに興じるのだ。それは罰だろうか。私は甘んじてそれを受け入れ、淫らな姿で喘ぎ続けるだろう。
結局、父親と息子に身体を開く私も貞操観念のない好色な女だ。

「さっきの口紅を……」
「はい」

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