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我が運命は君の手にあり
第8章 第八章
時江は胸元からポケットティッシュを取り出した。
「一人で泣いてください。これは差し上げますので」
去り際に残していったポケットティッシュ。そのケースは時江から贈られた着物の共布で作られていた。
「時江さん……」
これを胸元に忍ばせ、どんな気持ちで私と対峙していたのか。
嫌われてなどいない……
冴子はあらゆる感情が押し寄せ、声を殺して泣いた。
失いたくない、何も失いたくなかった。今の生活も、遼の愛も……
携帯電話が短く震えた。
――駐車場にいるから来なさい
――はい
剛介のメールを見つめ、冴子は染々と思った。自分の存在など空気よりも軽い。昔と同じ、何も変わらない。
冴子は涙を拭き、ティッシュをバッグに入れて部屋を出た。そして玄関に立ち、家の中を眺めた。
「時江さん、何もかも、本当にありがとうございました。失礼します」
ここへ来ることは二度とないだろう。冴子は一礼し、扉を閉じた。
「一人で泣いてください。これは差し上げますので」
去り際に残していったポケットティッシュ。そのケースは時江から贈られた着物の共布で作られていた。
「時江さん……」
これを胸元に忍ばせ、どんな気持ちで私と対峙していたのか。
嫌われてなどいない……
冴子はあらゆる感情が押し寄せ、声を殺して泣いた。
失いたくない、何も失いたくなかった。今の生活も、遼の愛も……
携帯電話が短く震えた。
――駐車場にいるから来なさい
――はい
剛介のメールを見つめ、冴子は染々と思った。自分の存在など空気よりも軽い。昔と同じ、何も変わらない。
冴子は涙を拭き、ティッシュをバッグに入れて部屋を出た。そして玄関に立ち、家の中を眺めた。
「時江さん、何もかも、本当にありがとうございました。失礼します」
ここへ来ることは二度とないだろう。冴子は一礼し、扉を閉じた。