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我が運命は君の手にあり
第1章 第一章
最寄り駅から徒歩で二十分、都会の喧騒を遮断した閑静な住宅地に、ひと際目立つ日本家屋がある。格式ある数奇屋門、周囲を巡る竹垣、瓦屋根。威風漂うその屋敷を前に、足を止める者は少なくない。
垣根の向こうに見える金木犀は樹齢六十年を数えて尚高く青々と繁り、今年もまた花の時を迎えていた。
『染井流 いけばな教室』
竹垣に貼り付いた白い看板はせっかくの佇まいに水を差しはしたが、毛筆書きのみの簡素な作りは不釣り合いではなかった。
「時江さん、あの話進めることにするよ」
「本当ですか?」
安堵する時江の声を背中で受け、遼は「あぁ」と目をふせた。
「奥様も旦那様も、きっと喜んでいらっしゃいます」
「親父が? ふっ、そりゃそうさ」
彼は読み終えたばかりの手紙を封筒に戻した。
「お家元……」
「時江さん、これ、燃やしといて」
背を向けたまま、彼は封筒の裏書きを時江に向けた。
「え?」
垣根の向こうに見える金木犀は樹齢六十年を数えて尚高く青々と繁り、今年もまた花の時を迎えていた。
『染井流 いけばな教室』
竹垣に貼り付いた白い看板はせっかくの佇まいに水を差しはしたが、毛筆書きのみの簡素な作りは不釣り合いではなかった。
「時江さん、あの話進めることにするよ」
「本当ですか?」
安堵する時江の声を背中で受け、遼は「あぁ」と目をふせた。
「奥様も旦那様も、きっと喜んでいらっしゃいます」
「親父が? ふっ、そりゃそうさ」
彼は読み終えたばかりの手紙を封筒に戻した。
「お家元……」
「時江さん、これ、燃やしといて」
背を向けたまま、彼は封筒の裏書きを時江に向けた。
「え?」