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我が運命は君の手にあり
第1章 第一章
「そうしてくれと書いてある。ふっ、俺からの手紙は焼き捨てたらしい」
背中を見ていた時江の口調が変わった。
「そういう事はお家元がご自分でなさるべきです。冴子さんはそれをお望みなんですよ。ご自分の手で、すべてを灰にしてしまってください」
初秋の風に乗り、虫の声と金木犀の香りが漂ってくる。庭に散り落ちた無数の花を、オレンジ色の絨毯みたいだと言った冴子は、今も心に居座ったままだ。
「すべてを灰に、か……」
「そうですとも。それでは、夕飯の支度がありますので私はこれで」
母の敦子が病で伏せるようになってすぐ、時江は住み込みの家政婦としてこの家にやってきた。二年後、敦子は亡くなったが時江は残り、忙しい父親に代わってまだ七つの遼と、ひとつ年上の姉由梨に尽くした。日々の生活を支えて二人を見守り、時には厳しく諌めもした。
父剛介が他界して一年半、遼にとって時江は身内同然の存在となっていた。
背中を見ていた時江の口調が変わった。
「そういう事はお家元がご自分でなさるべきです。冴子さんはそれをお望みなんですよ。ご自分の手で、すべてを灰にしてしまってください」
初秋の風に乗り、虫の声と金木犀の香りが漂ってくる。庭に散り落ちた無数の花を、オレンジ色の絨毯みたいだと言った冴子は、今も心に居座ったままだ。
「すべてを灰に、か……」
「そうですとも。それでは、夕飯の支度がありますので私はこれで」
母の敦子が病で伏せるようになってすぐ、時江は住み込みの家政婦としてこの家にやってきた。二年後、敦子は亡くなったが時江は残り、忙しい父親に代わってまだ七つの遼と、ひとつ年上の姉由梨に尽くした。日々の生活を支えて二人を見守り、時には厳しく諌めもした。
父剛介が他界して一年半、遼にとって時江は身内同然の存在となっていた。

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