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我が運命は君の手にあり
第10章 第十章
見よう見まねで作業する冴子は真剣だった。小さな弓形の道具で見当をつけ、口縁に糸をあてて怖々とろくろを回した。
「上手いじゃないか」
「あぁ、よかった。きれいに切れました」
「ふふっ、なかなか筋がいい」
形が出来たら乾燥させて素焼きし、釉薬を掛けてから本焼きになるという。
「どんな色にしたい?」
冴子は信子の姿を思い浮かべた。
「あの……薄い緑色に。私の物も同じ色でお願いします」
「うむ、どんな緑色になるかはお楽しみだ」
電動ろくろに置かれた粘土が、染井の手で面白いように形を変える。粘土の内側に入れた手と外側の手で丸くなっていく様に釘付けになり、冴子は飽く事なく見続けた。真顔の染井は水を付けながら慎重に手を滑らせ、時々目が合うと相槌を打った。
花器になるであろうその形に色が付き、焼き上がったらどんな作品になるのか。そこに生けられる花はどんな花で誰が生けるのか。思いを巡らせていた冴子は、花器と花、人との一度きりの出会いが生け花なのだと思った。