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我が運命は君の手にあり
第10章 第十章
「厚みが均等になるように、両手でやると調節しやすい」
「難しいですね」
「私より上手く出来たら困るじゃないか、はははっ」
土の感触が心を落ち着かせた。
「旦那様、出来上がったら祖母にプレゼントしてもいいですか? 」
「ふむ、それなら自分用にもうひとつ作るといい」
「え、はい、ありがとうございます」
気持ちが和らいでいく。冴子は信子と過ごした日々を振り返りながら粘土を捏ねた。
祖母を待ちわびて寝入っていた時に掛けられた肌掛けの感触や暖かさ。運動会の昼食時間にようやく駆け付けてくれた祖母の焦った笑顔。小さい頃はそれだけで幸せだったのに、なぜこうも欲深くなってしまったのか。
「あっ」
口縁が大きく歪んだ。
「邪念が紛れ込んだか。ははっ、冗談だよ。やり直せる」
「はい」
「冴子、時々ここで陶芸をやるといい」
「え?」
「いやか」
偽りのない笑みが溢れる。
「いえ……凄く楽しいです」
「凄く楽しいか、初めて聞く言葉だ」
隣で手本を示す染井の動きには迷いがなく、自然にろくろが回る。でこぼこだった口縁があっという間に切り取られ、切り口は、なめし革を当てられて丸みを帯びていった。
「難しいですね」
「私より上手く出来たら困るじゃないか、はははっ」
土の感触が心を落ち着かせた。
「旦那様、出来上がったら祖母にプレゼントしてもいいですか? 」
「ふむ、それなら自分用にもうひとつ作るといい」
「え、はい、ありがとうございます」
気持ちが和らいでいく。冴子は信子と過ごした日々を振り返りながら粘土を捏ねた。
祖母を待ちわびて寝入っていた時に掛けられた肌掛けの感触や暖かさ。運動会の昼食時間にようやく駆け付けてくれた祖母の焦った笑顔。小さい頃はそれだけで幸せだったのに、なぜこうも欲深くなってしまったのか。
「あっ」
口縁が大きく歪んだ。
「邪念が紛れ込んだか。ははっ、冗談だよ。やり直せる」
「はい」
「冴子、時々ここで陶芸をやるといい」
「え?」
「いやか」
偽りのない笑みが溢れる。
「いえ……凄く楽しいです」
「凄く楽しいか、初めて聞く言葉だ」
隣で手本を示す染井の動きには迷いがなく、自然にろくろが回る。でこぼこだった口縁があっという間に切り取られ、切り口は、なめし革を当てられて丸みを帯びていった。