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我が運命は君の手にあり
第14章 第十四章
ホームの向こう側に停車した列車に男が駆け寄っていく。窓から中を覗き、次の窓、次の窓へと移動していく。
こっちを見ないで、と冴子は願った。

発車する列車に気付いた男が振り返ると、冴子はすぐさま俯いた。目が合えばきっと知られてしまう。今も泣きたいほど愛していると。

列車の加速に助けられ、冴子の怯えはあっさりと解かれた。それでも、打ち寄せる感情を抑える事はできない。気をまぎらわそうと弁当を開いた途端に涙が溢れた。冴子は泣きながら箸を割り、それを頬張った。

自問自答を繰り返す。どこで間違えたのか。どうすれば遼を傷つけずに済んだのか。あの日花展に行かなければ、染井剛介に会わなければ、連絡などしなければ――

だが、もう一人の自分が耳元で囁く。
染井家の門を潜り、またとない幸運を掴んだ自分に悔いはない筈だ。あの日が幸せの頂点だった。もう一度時間を戻せたとしても、お前はあの門を潜るだろう。そして同じ道を選び続ける。着飾った自分に陶酔し、染井との肉欲に溺れ、その施しでは足りずに遼の愛さえも弄ぶ。

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