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我が運命は君の手にあり
第3章 第三章
それとなく様子を窺っていた遼が近付いてきた。

「こんにちは、体験教室をご希望ですか? ありがとうございます。ご記入後、奥の展示作品をご案内したいのですが、お時間大丈夫ですか?」
「はい、大丈夫です!」

声が揃った二人の主婦は、顔を見合わせて笑いだした。

「では後ほど」と、その場を離れた遼が冴子にこくりと頷いた。冴子が慌てて頭を下げると、彼は即座に視線を外し足早に行ってしまった。
冴子は不安になり、パーテーションの裏に回って鏡を覗いた。化粧崩れを確認して口紅を塗り直したものの、何か不手際があったのではないかと落ち着かなかった。
染井剛介は辞めていく人間だったが遼は違う。この先家元になる彼に疎まれたら、またあの生活に戻るしかない。雑踏に埋もれ、行く先も見通せなかった鬱々とした日々。
いやだ、失いたくない、戻りたくない。

「あのう、これでいいですか?」

先程の二人が、記入した用紙を冴子に見せに来た。

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