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せめて、今夜だけ…
第7章 夜明けのコーヒーを
―――――――――――ドキッ!!
心臓が、跳ねた…。
どんな人混みの中でも、絶対に見間違うはずがない。
会いたくて、会いたくて…、心の底から会いたいと願っていた。
昨夜、あんなに肌を重ねたのに、離れた瞬間に会いたいと切に願っていた。
人混みの中に、見つけた横顔。
「な…っ」
心臓の高鳴りのせいで息苦しくて、思うように声が出ない。
頼む、今だけは何も邪魔しないでくれ…っ。
足の痛みも心臓の音も。
向こうは俺に気づいてないようだ。
でも、見間違いであるはずがない。
足の痛みも、寒さも
さっきまで感じていた絶望感も全て吹き飛んだ。
「魚月ぃぃ……っ!!」
今なら、足の骨が折れてても
声が枯れてても
必死にその人の名前を呼んで、その人の元に駆け寄れる、そんな自信があった。
人混みを掻き分けながら、必死に手を伸ばして、その人を捕まえられるだろう。
「魚月…っ!」
俺の視線は真っ直ぐに、ただ人混みに紛れてる魚月だけを捉えていた。