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せめて、今夜だけ…
第7章 夜明けのコーヒーを
「やめて…っ!離してっ!」

それでも、尚も魚月は俺の腕の中でジタバタと抵抗している。
畠から見れば痴漢そのものだが、住宅街ということもあって周りには誰もいない。

「魚塚さんっ!離し…」
「うるせぇよっ!!」

俺のその声に驚いたのか、魚月の抵抗が無くなった。

俺はというと…


「な、何勝手に店辞めてんだよっ!……こ、こっちはさっき…、マジで久しぶりの全力疾走で…っ、店まで行って…っ」


全力疾走の動悸と、魚月に触れてる動悸のせいで息苦しくて上手く喋れないでいる。
言いたい事すら纏まってないせいでその内容はほぼ支離滅裂。

「勝手に…、いなくなりやがって…っ!こっちは朝から…、何も集中出来ねぇし…っ!お、お前のせいだろうが…っ!!」


ドクンッ、ドクンッと、耳を澄ませば心臓の音が聞こえてしまいそうなぐらい高鳴っている。
頭の中はパニックだし、何が言いたいのか自分でもわからない。

「ホ、ホテル代…、女が払ってんじゃねぇよっ!!……クリーニング代だって…、つーか、勝手に帰りやがって…っ!」

まるで壊れたプレーヤーのように、同じことを繰り返したり、ただただ思いのままに話したり…。
今、まともに顔を上げて魚月の方を見れない。

どこまでみっともないんだ、俺は…。



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