この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
せめて、今夜だけ…
第7章 夜明けのコーヒーを
「ごめんなさい…。挨拶もせずにいなくなって…。お店も辞めちゃって」
人差し指で涙を拭った魚月は、ホテルからいなくなった事と、挨拶もなしで店を辞めた事を俺に詫びた。
「あ、いや…。それは、もういいんだけど…」
さっきは勢い任せに怒ってしまったが、ホテルからいなくなったことについては、もうそんなに怒ってない。
もう2度と会えないかも…、そう思った瞬間、怒りより何より、目の前が真っ暗になってしまったが。
「でも、後悔はしてませんよ?」
婚約者がいながら、俺に抱かれたことを後悔なんてしてないと言う。
一歩間違えれば不倫になるというのに、後悔してない、と。
「だって、一瞬だけだけど、自由になれた気がしました」
「…………っ!」
その笑顔は、昨夜に見せたあの悲しい笑顔じゃなかった。
まるで、何かを決意したかのような瞳。
あの、オニキスのような真っ黒な瞳で真っ直ぐに俺を見つめている。
嗚呼、俺はこの瞳に射抜かれてしまっていたのだと、その時になって初めて気づいた。
「まぁ、やり方はアレですけど…」
何でこんな単純な事に気づかなかったんだろう。
この想いに気づくまで、俺は一体何をしてたんだ?
この気持ち、あの夏の日を思い出した。
あの夏の日…。
憧れの先輩に近づけたあの夏の日…。
人差し指で涙を拭った魚月は、ホテルからいなくなった事と、挨拶もなしで店を辞めた事を俺に詫びた。
「あ、いや…。それは、もういいんだけど…」
さっきは勢い任せに怒ってしまったが、ホテルからいなくなったことについては、もうそんなに怒ってない。
もう2度と会えないかも…、そう思った瞬間、怒りより何より、目の前が真っ暗になってしまったが。
「でも、後悔はしてませんよ?」
婚約者がいながら、俺に抱かれたことを後悔なんてしてないと言う。
一歩間違えれば不倫になるというのに、後悔してない、と。
「だって、一瞬だけだけど、自由になれた気がしました」
「…………っ!」
その笑顔は、昨夜に見せたあの悲しい笑顔じゃなかった。
まるで、何かを決意したかのような瞳。
あの、オニキスのような真っ黒な瞳で真っ直ぐに俺を見つめている。
嗚呼、俺はこの瞳に射抜かれてしまっていたのだと、その時になって初めて気づいた。
「まぁ、やり方はアレですけど…」
何でこんな単純な事に気づかなかったんだろう。
この想いに気づくまで、俺は一体何をしてたんだ?
この気持ち、あの夏の日を思い出した。
あの夏の日…。
憧れの先輩に近づけたあの夏の日…。