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せめて、今夜だけ…
第8章 甘い痛み
……こんな場所まで来て、これじゃマジでストーカーだな。
いずれ魚月は玉の輿だ。
その方が魚月も幸せだろう。
一応俺もそれなりの出世コースには乗っているが、とてもじゃないが歯が立ちそうにない。
住む世界が違い過ぎるな。


必死にそう自分に言い聞かせた。
そうでもしないと、自分の中で暴れる感情をコントロール出来そうになかったからだ。
今、俺を止めているのは、僅かに残った理性だけだ。

もし、この理性がなくなったら…
そう思うと、自分でもゾッとする。

もし、僅かに残った理性がなくなったら…
もし、何もかもを捨てて本能のままに魚月を求めたら…







――――――「魚塚さん?」










――――――――――っ!?










もし、この想いが暴走したら…










そんな事を思ってる俺の背後から聞こえた声。









それは…
その声は…





嘘、だろ…?
まさか…。





――――――「あ…」










ドクンッと心臓が高鳴る。

その声は、今1番聞きたくて
今1番聞きたくなかった声だ。

ぎこちない動きで振り返ると、そこにいたのは…。






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