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せめて、今夜だけ…
第8章 甘い痛み
「魚、月……」
そこにいたのは、魚月だった。
「な、何で…、ここに…?」
呆然とした顔で俺を見つめる魚月。
俺は俺で呆然としつつ、この場を切り抜ける言い訳をしようと頭をフル回転させるが、咄嗟の事過ぎて適当な言い訳が見つからない。
つーか、これじゃガチでストーカー認定じゃねぇか…。
「いや、あの…っ」
ついこの間、さよならを言われたばかりなのに、女々しくもこんな場所にまで現れて…
ある意味ホラーだ。
「これは、その…」
言い訳を考えつつ、俺の視線は魚月に向けられている。
ストーカー認定されそうなヤバい状況だというのに…
店で見るドレスとは違う、普段着の魚月。
カジュアルな黒いワンピースに、相変わらずふわふわで思わず触りたくなるような髪。
……こんな状況なのに、魚月に見蕩れるなんて、俺はどこまでバカなんだ。
例えストーカー認定されて蔑まれても、嫌われても
魚月が誰かのものになってしまうとしても
魚月を見てるだけで幸せな気分になれる。
魚月の声を聞くだけで、身体中が熱くなる。
しかし、そんな幸せな瞬間は長くは続かなかった。
魚月ばかり見ていたから気づかなかった。
魚月のそばで寄り添う誰かの存在に。
「魚月、この人は?」