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せめて、今夜だけ…
第2章 欲心
そうだ、同じ会社内の女なら大丈夫と思っていたがその逆だ。
同じ会社ならどの課が1番潤っているかも把握しているし内部事情も知ってる。
俺達がいる課は海外出張も頻繁にある課で黒字部署として有名。
この肩書きだけで食いついてくる女ばかりだ。
しかも、同じ会社の経理部となれば尚更事細かく知ってるだろう。

その肩書きに目が眩んだのか、目の前の女達は鼻にかかった猫なで声で、まるで俺達を誘惑して来るかのような態度で出てきた。

「っていうか~、魚塚さんが来るなら、もっとお洒落して来ればよかった~」
「本当だよね~!急に魚塚さんが参加するって言うから~。サロンの予約もネイルの予約も取れなくて~」

「そ、それはどうも。光栄です…」

顔の筋肉をムリヤリ動かしてにっこり笑うので精一杯。

よく言うよ。
気合いの入った巻き髪に、まるで絵の具で塗ったかのような厚化粧。
料理の香りを台無しにしそうなぐらいのきつい香水。
ネイルもメイクもバッチリだ。
お前ら会社に何しに来てんだ、と喉まで出かかった言葉をシャンパンと一緒に飲み込んだ。

ここでそんな事口にしたら、せっかくの合コンが台無しだ。
桐谷が俺に頼み込んでまで来たがっていた合コンなのだから。

「えー、みんな、魚塚だけじゃなくて俺達とも会話してよーっ!」
「そうッスよーっ!いくら魚塚さんがイケメンだからって!」

桐谷と田中が場を盛り上げて和ませてくれている。

…ここは、桐谷と田中に任せて、俺はシャンパンでも楽しんでいよう。
元々は桐谷と田中が企画した合コンなんだし、俺は人数合わせで連れて来られたオマケみたいなもんだ。
ここで俺が前へ出ることもないだろうし。


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