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せめて、今夜だけ…
第9章 天使と悪魔
そう言いながら、魚月に先程撮った写真を見せた。
そこには破れた服に魚月の胸元、捲り上げられたスカート、微睡んだ魚月の顔。
どれをとっても情事の後を伺わせる様子が収められていた。

それを見た瞬間、魚月の顔が青ざめて行く。

「こんなのがバレたら婚約破棄だな。慰謝料も相当なもんだろうな」
「あ…、あ…」
「あの市原とかいう御曹司、俺の会社の名前聞いた瞬間、やけに馴れ馴れしかったもんなぁ。言いくるめるのも簡単そうだ…」

ベッドから立ち上がり写真を見せながらクスクス笑っていると

「やめてっ!」

スマホを取り上げようとベッドから起き上がり俺へと向かって来ようとしたが

「あ…っ!」

床に足を付かせた瞬間にその場にへたれこんでしまった。
まだ足や腰に力が入らないのだろう。

「立てねぇほど良かったのか?」
「……っ!」

顔を真っ赤に染めて俯く魚月。
こんな写真を収められては恥ずかしいだろう。

「ちゃんと俺の言うことを聞いてればバラしたりしねぇよ」


バラしたりなんかしない。
ただ、魚月との関係を切りたくないだけだ。

可愛くて愛しい魚月。
悪魔に心を売ってでも、俺は魚月と離れたくない。

「……最低」
「褒め言葉だな」

その台詞は、今まで散々女から言われ続けた台詞だ。
今更言われたところで何のダメージにもならない。



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