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せめて、今夜だけ…
第10章 溺れる魚達
こんな関係がバレたら身の破滅どころの話ではない。
不倫というだけで、相手が誰であれ世間からの印象は悪くなるし、会社の名前にすら傷がついてしまう。
しかも、相手は市原グループのような大企業の御曹司の婚約者。
バレたら会社にはいられなくなる。
間違いなくクビだ。
社会的にももう生きてはいけないだろう。
しかし
焦るどころか、俺は何故か清々しい気分だった。
満足げな表情で微笑む俺を見て桐谷も不思議に思ったのだろう。
「何だよ、変なやつ…。確かに伝えたからな」
もしかしたら、俺と魚月の関係がバレたのかも知れない。
それを知った婚約者が会社に乗り込んで来たのかも知れない。
昨日、あの婚約者にご丁寧に名刺まで渡してしまったのだから。
だけど、もし本当にバレてしまったら――――――
俺はパソコンを閉じるとスクッと立ち上がり社長室へと急いだ。
もしバレていたとしたら、今更逃げも隠れもするつもりはない。
乱暴に扱ってしまったとは言え、魚月を抱いた事を後悔なんてしていない。
魚月に訴えられるなら、ある意味本望だな。
俺は覚悟を決めて、社長室までへの歩幅を早めて行く。
まるで破滅を迎え入れるかのように、一歩ずつ。