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せめて、今夜だけ…
第10章 溺れる魚達
「実はね、魚塚君。君を呼び出したのは他でもない」

部長の隣に座る社長がゆっくりと口を開いた。

「はい」

社長の口調はどこか重苦しい。
来るべきときが来たのかと、俺を俯きながら覚悟を決めて、社長の声に耳を傾けた。

「実はね…」

目を閉じながら、喜んで罰を受け入れようとすると…。










「こちらの市原グループさんが我が社と手を組みたいそうなのだよ」

















……は?
うちと手を組みたい…?











想像もしていなかったその言葉に、俺は腰が抜けそうになった。
うちの会社と手を組みたいって、何だそれは?
魚月関係の話じゃないのか?

訳がわからないという顔をしている俺に、安西という秘書は話を進め出していく。

「今度、我が社で新しくホテル事業を展開する事になりました。つきましては、家具などは全てBijouxさんにお任せしようかと言うのが社長の案なのです」
「は、はぁ…」
「こちらが詳しい図案です。Bijouxさんにとっても決して損をする話ではありません」

そう言うと、女は鞄から1枚の紙を手渡した。
そこには、これから建設されるホテルの図案やら予算やらが事細かに記されていた。

「屋内には、スパやエステ、ネイルサロン、ビュッフェ式のレストラン、メニューも四季を感じさせるものを取り入れ、シェフも一流の人材を――――――」


早い話が、超高級ホテルを建設するから手を貸せ、ということだ。

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