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せめて、今夜だけ…
第10章 溺れる魚達
社長と部長と俺の3人は提示された図案に目を通した。
どれもこれも一流のもので固められた高級ホテルを造ろうとしているようだ。
確かに魅力的な話ではあるが、今のこの日本にこんな高級ホテルなんか必要か?
社長も部長も、一応はこのホテルの案を褒めてはいるが考えは俺と同じっぽいな。
笑顔が引き釣っている。
相手が市原グループとなると、お世辞の1つでも言わねぇとな。


「ここ最近、海外からの旅行者が著しく上昇しております。それに伴い、日本にもハイクラスなホテルは必要ではないのかと言うのが社長の意見なのです」

海外の旅行者に対して見栄を張りたいのだろう。



どうやら、魚月との関係はバレてなさそうだ。
市原グループは、純粋に我が社と手を組んでホテル事業を成功させたいだけのように思える。
しかし、ここである疑問が浮かんだ。

我が社から家具を購入してくれるのは嬉しいが、何故俺を呼び出したのだ?
こんな話なら社長と部長に話せばいいだけで、わざわざ俺が同席しなくてもいいはずだ。
平社員である俺を呼び出す必要があったのか?

「あの…、部長…」

俺のその声に、図案に目を通していた部長が顔を上げて俺の方を見た。

「何だね、魚塚君」
「どうして私をこの席に?」







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