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せめて、今夜だけ…
第10章 溺れる魚達
まさか…、そんなはず…
でも、この妖しく笑う口元はあの頃のままだ。



俺の胸に、懐かしくも淡く辛いあの日の感情が広がる。
高校2年の時に味わったあの苦い感情と記憶。
俺が辛さと孤独を味わい、大人になったあの失恋。





―――――「風間、先輩…?」













その後、俺と安西…、もとい風間先輩は会社の屋上に来ていた。

『知り合い同士なら、2人っ切りの方が話しやすいだろう』

と、社長と部長が気を聞かせてくれたのだ。
…というか、逃げただけだろうけど。

まぁ、こんな突拍子もないホテル計画の話なんてあまりしたくないのだろう。
でも、市原グループとは手を組んで置きたくて俺に丸投げしたというところだ。

「久しぶりね」

風間 渚-かざま なぎさ-
俺の1つ年上、同じ高校、同じバスケ部の先輩。
俺に失恋の辛さを教えてくれた元カノ。
今は"安西"という苗字になってるようだ。



先輩は屋上のフェンス越しに都心の景色を眺めながら俺に話しかけて来る。
俺はというと…、緊張のあまりに距離を取り先輩の後ろ姿を眺める事しか出来なかった。

「15年振り…、ぐらいですね…」



つーか、今更何を話せばいいんだ…。
先輩とはあの夏の日から話してない。
卒業してからは先輩がどうなったかなんて話は誰からも聞いてない。

しかも、寄りにも寄って市原グループの関係者かよ…。


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