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せめて、今夜だけ…
第10章 溺れる魚達
あの夏の日、先輩は俺をあっさり振った。
今でこそ好きなように遊んではいるが、あの当時は毎日悲しくて仕方なかった。
何も手に付かなくなり、何もかもが嫌になったあの日々…。
「ぼ、僕なんかと…、別れて正解でしたよ…。先輩の言ってた通り…、つ、つまらない男ですから…」
先輩の瞳が真っ直ぐ俺を射抜く。
その瞳に見つめられると、一瞬で時間と距離を飛び越えて過去に帰ってしまう。
だが、あの頃のような甘酸っぱいトキメキは感じない。
それは…、俺がもう高校生のガキなんかじゃなく大人になってしまったからだろうか。
それでも、やっぱり…、先輩は俺にとっては今でも特別な存在だ。
「でも、驚いちゃったわ。あなたがうちの翔太さんと知り合いだったなんて」
「翔太さん」
「社長の息子さんよ。翔太さんがあなたの名刺を持ってたのよ」
――――――――っ!
その一言で、俺の意識は一気に現実に引き戻された。
翔太…、確かそんな名前だったな…。
そうだ。
先輩は今は市原グループ側の人間だ。
魚月の婚約者の親父の会社…。
シャレにならない…。
「ねぇねぇ、どんな関係の繋がり?息子さんと言えど忙しい人だからなかなかアポも取れないのよ?」
「あ…、それは…」
今でこそ好きなように遊んではいるが、あの当時は毎日悲しくて仕方なかった。
何も手に付かなくなり、何もかもが嫌になったあの日々…。
「ぼ、僕なんかと…、別れて正解でしたよ…。先輩の言ってた通り…、つ、つまらない男ですから…」
先輩の瞳が真っ直ぐ俺を射抜く。
その瞳に見つめられると、一瞬で時間と距離を飛び越えて過去に帰ってしまう。
だが、あの頃のような甘酸っぱいトキメキは感じない。
それは…、俺がもう高校生のガキなんかじゃなく大人になってしまったからだろうか。
それでも、やっぱり…、先輩は俺にとっては今でも特別な存在だ。
「でも、驚いちゃったわ。あなたがうちの翔太さんと知り合いだったなんて」
「翔太さん」
「社長の息子さんよ。翔太さんがあなたの名刺を持ってたのよ」
――――――――っ!
その一言で、俺の意識は一気に現実に引き戻された。
翔太…、確かそんな名前だったな…。
そうだ。
先輩は今は市原グループ側の人間だ。
魚月の婚約者の親父の会社…。
シャレにならない…。
「ねぇねぇ、どんな関係の繋がり?息子さんと言えど忙しい人だからなかなかアポも取れないのよ?」
「あ…、それは…」