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せめて、今夜だけ…
第10章 溺れる魚達
幸せが約束されたようなもの?
はたから見ればそうかも知れないが、そうじゃない。
魚月の辛さは俺がよくわかってる。

…まぁ、俺が魚月にしてる事の方がよっぽど酷いな。

そんな俺の現実を知ってか知らずか、先輩がとんでもないことを口走る。

「そうだ!良かった今夜、翔太さんを誘って食事でもしない?」





…………?
は、はぁ…?
魚月の婚約者と…、食事…?






「は?せ、先輩…、な、何を…?」

先輩の話しに対し、思わずその場に倒れ込みそうになってしまった。
魚月と婚約者を誘って食事、だと?

「そう!今回のホテル計画の話しもあるし、私も翔太さんの婚約者に会ってみたいし」



……最悪だ。
何だよその悪夢…。
確かに以前、翔太に食事に誘われた事があるが、忙しいとか適当な事を言って断ったのに。

「私と魚塚君、翔太さんと婚約者、ペアになるから、ちょうどいいでしょ?」



――――――魚月と、婚約者…。
そんな場にいたくない。
そんなもの見たくない、断ってしまいたい。
しかし、これは俺1人で決めていいことじゃない。
今後の市原グループとBijouxの契約にも関わるし、仕事の話しも含まれている。

俺の判断で断るなんて出来ない…。
でも…、行きたくない…。







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