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せめて、今夜だけ…
第10章 溺れる魚達
公に出来なくても陰の存在でも、最低な行為をしてでも魚月のそばにいたい。
ただ、魚月のそばに…。

屋上で、肌寒い風を受けながら風間先輩の電話が終わるのを待っていた。
魚月と婚約者との食事会…、魚月に会いたいけど見たくないものまで見てしまいそうで怖い。
今更だが断るか?
でも、ここで断ったりしたらせっかくのホテル計画が無駄になってしまうかも知れない。
今日は仕事の話しと割り切って同席した方がいいだろう。

すると、電話を終えた風間先輩が

「―――――今、社長と翔太さんに電話をしたらOKを貰えたわ」
「そう、ですか…」

風間先輩は食事会の話しがスムーズに進んだのが嬉しいのかスマホを鞄に直しながらとても嬉しそうだ。




本当は、心の中でひっそりと願っていた。
俺から断るわけにはいかないのだから、市原側から断ってくれないかと。
「今日は忙しい」と、今日の食事会を断ってくれないかと願っていたのに。

「今夜18時、この近くのレストランで待ち合わせなんだけど、大丈夫?」
「はい、大丈夫です」
「よかった。あ、魚塚君の番号教えといてもらえる?また後で連絡するから」




風間先輩の話しを聞きながら、番号交換をしながら、俺はまだ他人事のように思っていた。
今夜、とうとう
魚月の婚約者とまともに会うことになってしまった。
成り行きとは言え、こんな展開を誰が予想出来ただろうか。



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