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せめて、今夜だけ…
第11章 罰は蜜の味
俺と先輩が?
昔の俺なら喜んだだろう。
でも、今は…。

「僕と安西さんはそんな関係じゃ…」

魚月や翔太の前で馴れ馴れしく先輩の名前は呼べない。
それではこの話題に拍車をかけてしまうことになる。
謙遜しながらも話題を変えようとするが…。

「でも、Bijouxさんとは長いお付き合いにしたいと思ってますから。安西さんと魚塚さんがそうなればいつでもこうして食事が出来ますし」

ニコニコしながら、本気で俺と先輩を祝福してくれてるように見える。
悪気がないだけに余計に返答に困ってしまう。



俺が…
俺が欲しいのは先輩じゃない…。
俺が欲しいと思ってるのは、お前の――――――。



喉まで出かかった言葉…。
喉に引っかかったものを飲み込むように、流し込んだ水と共にその言葉も飲み込んだ。



「ところで、翔太さんと魚月さんのご結婚はいつ?」
「会社の引き継ぎ等が忙しくてまだ決まってません。籍だけでも入れてしまいたいんですが、どちらにせよ仕事が落ち着かないと」



会社の引き継ぎ…、落ち着いたら籍を…。
耳を塞ぎたくなる会話ばかり。
酔ってもいないのに吐きそうだ。

入籍の話しを出された瞬間に、魚月の顔が雲って行く。
それは、翔太との結婚が嫌なのか、俺と関係を持ってしまった事への罪悪感からか。





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