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せめて、今夜だけ…
第11章 罰は蜜の味
「今日はありがとうございました」
「こちらこそ、貴重な時間を割いて下さりありがとうございました。父にもちゃんと伝えておきますので」

レストランを出た後、俺は先輩と、魚月は翔太と一緒に
お互いに別々の帰路に着いた。
魚月と翔太はわかるが、どうして俺と先輩がワンセットになっているのだろう。

「魚塚君、今日はありがとう」
「いえ…」
「翔太さんも社長もBijouxさんの事を気に入ってるみたいだし、今回の話しはほぼBijouxさんに決定しそうよ」
「それはどうも…」

華やぐ夜の街を先輩と2人で歩いているが、心はここにあらず、だ。
先輩の話しなんて耳に入って来ない。
魚月に会いたくて食事会に参加したが、やはり聞きたくない話しばかりを聞かされてしまった。
しかも、俺と先輩の仲を取り持つような状況にまでなってしまった。
この間の事と言い自分の学習能力のなさに嫌気が刺す。

「ねぇ、この後2人で飲み直さない?久しぶりの再会だし、いろいろ話したいし」
「この後、ですか?」

確かに、緊張と気まずさで全然酔えてない。
せっかくの高級ワインだというのに、味すら覚えてない。
飲んだ気すらしない。

でも、この後呑気に酒を飲める気分でもない。



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