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せめて、今夜だけ…
第12章 蛹、羽化の時
もう少し楽しみにたかったが、無反応のままもつまらない。
あまり無理をして痕を付けてしまうと翔太にバレ兼ねない。
渋々だが、拘束した魚月を弄ぶのは一旦ストップした方が良さそうだな。

「仕方ねぇ。電マは許してやるよ」

そう言うと電マのスイッチを切った。
スイッチは切れたと言うのに、魚月の体は更に大きく痙攣しだしている。
指に比べたら電マの刺激は強烈だっただろうし、その余韻となれば大きく反応してしまうのも無理はない。

「もう俺の声も聞こえてねぇか…」
「はぁ、はぁ、…は、ぁ」

本能的に息を整えようと荒い呼吸を繰り返しているが、意識は未だに混濁しているようだ。
俺の呼び掛けにも、問い掛けにも答える様子がない。

「魚月…」







今の魚月には、俺の声は聞こえていない。
俺が何を言ったところで、どうせ後になれば忘れているだろう。

ずっと言いたくて、でもずっと我慢していた言葉がある。
これを言ってしまえば魚月が困らせてしまう、と
心の中に封印してた言葉。

何度も何度も口を吐きそうになり…、その度に飲み込んで来た言葉。




「愛してる」




散々魚月を弄び、苛立ちをぶつけて来た俺が、こんな言葉を口にする事自体が烏滸がましい。
それでも、魚月を見つめながら、俺は自分の気持ちを再確認してしまった。


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