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せめて、今夜だけ…
第12章 蛹、羽化の時
魚月には聞こえないぐらい小さな声でそう呟いた。
口にせずにはいられなかった。

暇潰しなんかじゃない。
からかってるわけじゃない。

魚月をぐちゃぐちゃに壊してしまいたいぐらい、俺は魚月が…っ。



「…………っ!」

魚月の腕を拘束していた手錠を外してやると、手首にはうっすらと血が滲んでいた。
これじゃ、翔太にバレるのも時間の問題だな。
足の拘束具も外し、魚月を抱き抱えると、部屋の隅に置いてあるベッドへと運んで行く。
ベッドと言っても、無造作にマットレスが置いてあるだけ。
マットレスにシルクの真っ白のシーツを敷いただけの簡易的なベッドだ。

俺に抱き抱えられても魚月は何の抵抗もしなかった。
いつもなら俺に触られただけでギャーギャーうるさいのに。

一糸纏わぬ姿の魚月をベッドに寝かせた。
真っ白な魚月の肌と、真っ白なシルクのシーツ。
その姿が妖艶過ぎて、思わずごくりと生唾を飲み込んでしまいそうになるぐらいだ。

「ん…っ、魚塚さ…」

ぼんやりとした瞳で俺を見上げる魚月の瞳。
その瞳にはいつもの憎しみは見えない。
完全に理性はなくなっているようだ。

「どこまでも俺を溺れさせてくれる…」

すがるようなその声、魚月の色気に背筋がゾクッとする。


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