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せめて、今夜だけ…
第13章 明けの明星、宵の明星
つーか、シャワーの音は聞こえてるけど、ちゃんと髪や体は洗えてるのか?
まだ本調子じゃないみたいだし…、だからと言って浴室の中に入る訳にもいかない。
俺も今はほぼ半裸状態。
だんだんと体が冷えてきて少し肌寒い。
脱衣場にあるホテルの備え付けのバスローズを着て寒さを凌いでいると。

「あの…」

シャワーの音に交じって魚月の声が聞こえた。
浴室にいるせいか、シャワーの音よりも魚月の声だけがクリアに聞こえた。

「どうした?」

何かあったのかと思い魚月の声に答えると…

「明日は…、雨が降るみたいですよ…」





は?雨…?
突拍子もないその発言に、俺はすぐに応える事が出来なかった。

雨…?
明日?つーか、もう日付は変わってるはずだから、今日か?
そう言えば、週間予報で雨のマークがあったような…。
でも、いきなり何だよ…。


「魚塚さん、雨は好きですか…?」

俺の返事も聞かぬまま魚月は淡々喋り続けた。
力の抜けた気怠い声で。

「いや…」

雨なんて好きじゃない。
傘は邪魔になるし、出掛けるのも億劫になる。
特にこの季節の雨はまるで刃物みたいに冷たくて痛い。
それに、雨の日は…、初めて魚月を抱いた夜を思い出してしまう。


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