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せめて、今夜だけ…
第13章 明けの明星、宵の明星
「くす…、何だよ…、引き止めて欲しいのか?」
「…………。」

俺のその問いかけに、魚月は何も答えなかった。
さすがに今の質問は呆れられたか…。

魚月が俺を求めるなんて有り得ない。
そんなことは分かりきったことだ。
分かってる上でつい軽口を叩いてしまった。
例え魚月に嫌われてしまってても、魚月との会話はいつも楽しく思えた。

まぁ、そう思ってるのは俺だけだけどな。







―――――お互いにシャワーを浴び、身嗜みを整え、体力が戻ったのを確認。
ホテルから出ると、外はもううっすらと明るくなっていた、が
空には分厚い鈍色の雨雲が広がっていた。
魚月の言う通り、今日は雨になるみたいだな。

「確かに降りそうだな…」
「…………。」

まだ降り出してはいないが、いつ降り出しても可笑しくない空模様。
ついさっきシャワーを浴びたところだし、出来るなら濡れたくない。
鈍色の空を見上げながらうんざり声でそう呟いた。
こんな時間に街を歩いてる人もホテルから出てくる人もいない。
この時間ならほとんどの人間はまだ寝てるだろう。
事情がない限りこんな寒空の下には出てこない。

「私、帰ります…」

そう言ってさっさと俺に背中を向けた魚月。



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