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せめて、今夜だけ…
第13章 明けの明星、宵の明星
窓から空を眺めると、先程より更に空が明るくなっていた。
お陰で先程よりも分厚い雨雲がハッキリと確認出来た。

「本当に…、嫌な天気ですね…」

そのせいだろうか、さっきから体が寒い。
体は寒気を感じてるのに、体の中には微熱が溜まってるという何とも不思議な体調だ。

魚月は…、ちゃんとタクシーを拾えただろうか…。
ちゃんと帰路に付けただろうか…。
鈍色の空を眺めながら俺はぼんやりとそんな事を考えていた。



―――――15分後、タクシーはマンションの前に到着。
タクシーを降りた瞬間、俺の頬に冷たい雨粒が降ってきた。
あー、降ってきたな…。
本格的に降り出す前に何とか帰って来れたな。
金を支払い、俺は自分の部屋へと向かった。
仕事までまだ少し時間があるから、軽く横になるか。

エレベーターに乗り込み自分の部屋の階のボタンを押す。
いつもならマンションの住人とすれ違う事もあるが、さすがにこの時間じゃ誰ともすれ違わねぇな。

にしても、今朝はやけに冷え込むな…。
エレベーターの中で何度も寒気を感じた。
背筋がゾクッとするような嫌な寒気。

いつも朝はトースターと熱いコーヒーと決めているが、今朝は食欲がない。
昨日のレストランから何も口にしていないというのに、何も食べたくない。

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