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せめて、今夜だけ…
第13章 明けの明星、宵の明星
とにかく、無理にでも何か食べて仮眠を摂らねぇと体に悪いし体力が保たねぇ。
これじゃ空腹と睡眠不足で仕事にならない。

エレベーターが開く。
歩きながらポケットにしまってある鍵を手探りで探す。
この間にも寒気が止まらない。
おまけに後頭部に鈍い頭痛まで走っている。
睡眠不足が頭痛に来たか?
それとも、最近の無理が蓄積されてんのか?
鎮痛剤なんて家にあったかな…。


ふらふらの頭でそんな事を考えながら自宅の施錠を解いて部屋の中に入った。

「………っ!」

部屋に入った瞬間、いつもなら何とも思わない部屋の空気が一気に俺の体を包み込む。
その空気が異様に冷たい。

いや、部屋の冷気のせいじゃなくて、俺の体調が可笑しいのだ。

「あ…、くそ…っ」

部屋のドアが閉まると同時に、緊張の糸が切れたのか俺は玄関にへたれ込んでしまった。

「はぁ、はぁ…」

体は寒いのに、身体中に滲む嫌な汗。
頭痛、食欲不振、目眩と息切れ。
倦怠感。
……本格的に風邪をひいてしまったのだとやっと気付いた。
風邪なんて、ここ最近マトモに引いてないから、自覚するのに時間がかかってしまったが…。

ホテルの脱衣場で体を冷やしたのが原因か?
それとも疲れやストレスのせいか?



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