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せめて、今夜だけ…
第13章 明けの明星、宵の明星
とにかく、いつまでも玄関でへたれ込んでる場合ではない。
汗を拭いて、とりあえず着替えて仮眠を摂って…。
確か風邪薬は買い置きがあったはず。
今は大事な契約を控えているのだから風邪なんて引いて休んでる暇なんかないんだ。

ふらふらの体に鞭を打つように立ち上がりリビングへと向かおうとした。

しかし、目の前の景色がぐにゃりと歪む…。

「あ…っ」





――――――――俺が覚えているのはここまで。







魚月を抱いた後の孤独感や虚無感。
叶わない恋だと知ってても、それでも夢中で魚月を抱いた。
愛してもらえないとわかっていても。
セックスに愛情なんて必要ないと思っていた。
ただ、どうしようもない欲望を吐き出せればいい、と。

俺が今まで抱いてきた女にも、こんな思いをさせて来たのだろうか?
だとしたら、これは俺への罰か?
散々女心を弄んで来た俺への罰か…?






―――――39℃…。

あの後、這うようにリビングに戻った俺は意識が朦朧としたまま社長と部長のスマホに連絡を入れていた。
いくら契約が大事だと言ってもこの体調では出社はおろかロクに仕事や会話も出来ない。




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