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せめて、今夜だけ…
第13章 明けの明星、宵の明星
ふらふらになりながら玄関へと向かった。
この間にもチャイムはうるさく鳴り響く。
今はこのチャイムの音すら耳障り。
風邪のせいで聴覚までやられてしまってるな。


ピンポンピンポンピンポン…。


「誰だよ…」

一言文句を言ってやる…っ。
この野郎…っ。

チェーンロックを外しドアの施錠を解き



――――――カチャ。




「ぅ、るせーっ!!」

勢いよく開かせたドア。
それと同時にうるさい訪問者に一喝。
つーか、何回チャイムを鳴らせば気が済むんだっ!
1回鳴らせば聞こえてるっつーのっ!

が、しかし
このうるさい訪問者は…



「あ、ごめんなさい…」
「……か、風間、先輩…?」



そこにいたのは、ポカンとした顔の風間先輩だった。
じゃあ、さっきからうちのチャイムを鳴らしていたのは風間先輩だったのか?

「風邪引いたって聞いたから…」
「あ、はい。まぁ…」

あまりの出来事に俺の思考が付いていかない。
高熱のせいで幻でも見てるのか?
つーか、訪問者の顔なんて確認しなかったからめちゃくちゃ怒鳴ってしまった…。

「一応スマホにもかけたんだけど、電源切れてるっぽかったから」

あー…、そう言えば充電してなかったから充電切れだったかもなぁ。
どうやら目の前に見えている風間先輩は幻ではないようだ。
少しずつ俺の思考も意識もハッキリとして来た。


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