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せめて、今夜だけ…
第13章 明けの明星、宵の明星
「明日も無理しないで、朝起きて体調が悪そうならお休みするのよ?」

さすが元主婦、と言いたくなってしまった。
相手を思いやって、ここまで手際よく看病をこなしてくれるなんて。
ソファに座る俺の横で先輩はカーペットの上に座りながらニコニコと俺を眺めている。

「でも、仕事がありますから」
「桐谷君に任せておけばいいじゃない」

…いや、あいつは信用ならねぇ。
同僚として見ればいい奴だが、仕事面ではそこまでの信頼は置いていない。

「彼、面白い人ね。今日だっていきなり私の連絡先を聞いてきて"今度飲みに行きましょう"ですって」

…あいつ、マジで張っ倒す!
あいつの女好きは周知の事実だが、まさか先輩にまで手を出そうとするなんて。
同僚ながら情けない。
さっきまで下がっていた熱がぶり返しそうだ。
先輩は本気と取っていないのかくすくすと笑っている。

「桐谷がすいません…」
「別に気にしてないわ。流石にバツイチを本気で口説いたりしないでしょうし、きっと冗談でしょう」

いや、あいつならわかんねぇ…。
バツイチだろうが人妻だろうが、自分のタイプとなれば目の色を変える。

「あいつは昔から美人には弱いんです。先輩みたいな」
「じゃあ、魚塚君も私の事美人だと思ってくれてるの?」



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